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番組チェック

タカラヅカ・スカイ・ステージの「見どころ」、「おもしろさ」を伝えるM・Kさんのコラム「番組チェック!」。タカラヅカ・スカイ・ステージが開局する3ヶ月前の2002年4月17日より始まり、現在も続いている長寿人気コラムでもあります。毎月、お勧め番組を取り上げ、出演している生徒の成長や番組の見所を臨場感をファンの目線で書き綴っています。紹介されている番組がきっと見たくなりますよ。

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第70回 彩乃かなみサヨナラ特別番組「麗しのミューズ」

 うっとうしい梅雨空を吹き飛ばすように、東京宝塚劇場では月組が名作ミュージカル『ME AND MY GIRL』を上演中です。今月の番組チェックは、その『ME AND MY GIRL』千秋楽をもって、宝塚歌劇団を卒業する月組主演娘役・彩乃かなみのサヨナラ特別番組をチェックしてみましょう。題して「麗しのミューズ」。温かい歌声と実在感あふれる演技が魅力の彩乃にふさわしいタイトルです。

 番組の見どころ、聞きどころはまず、インタビューに答える彩乃の言葉でしょう。退団を控えた今の心境、『ME AND MY GIRL』とサリー役への思い、そして花組、宙組をへて月組主演娘役として演じてきた12年間のエピソードなどを語っています。思いおこせば、彩乃のトークやインタビューは、宝塚の娘役という品位を保ちながらも、いつも率直で真摯、そして的確でした。思いを正確に伝えようと、慎重に言葉を選び、飾らない言葉で話してくれました。だからこそ言葉に説得力がありました。そして今回、おそらく生徒としては最後となるインタビューでは、いつも以上に正直な彩乃がそこにいて、静かな語り口ながら感情が深く、感動しました。

 節目節目の懐かしい舞台映像も豊富に流れ、またお茶を飲んだり、犬と遊んだり、散歩したりという映像も可愛らしかったのですが、そちらは放送でのお楽しみに。ここでは、彩乃の思いのこもったコメントを少し紹介しましょう。

 まずは『ME AND MY GIRL』宝塚大劇場公演初日について。
「いちばん最初に出てくる言葉は…さみしい、ってのはあります、正直。お稽古段階のときはあまり感じなかったんですよね。感じないようにしていた部分もあると思うんですけども。サリーとして初日が開くまでは、サリー、サリーっていうふうに思っていて、毎日、いつも通りお稽古に臨んでいた感じだったんですけど…初日の日に、いつも作品の主要メンバーと退団者が各スタッフさんにご挨拶に行くんですが、いつもは退団者のご挨拶を聞いている側だったのが、いつもの光景でなく自分がご挨拶する側にいて、それをアサコさんが見ていて、そこですごくさみしさを感じましたね。そうやってさみしいと思うことで、あぁやっぱり私、ほんとうに宝塚が大好きなんだ、っていうのを実感したんですね。で、そういうふうに思える状態で宝塚を卒業できるっていうのは、私がいちばん目指していたところでもありますし、そう思ってやめたいなと思っていたので、それができる今というのは、すごく幸せだなと思います」

 1997年初舞台を踏んだ彩乃は、翌年に花組に配属され、可憐な容姿と歌唱力、演技力で注目を集め、すぐに重要な役に抜擢されます。私自身、配属後すぐの『SPEAKEASY』で主人公の最初の妻を演じた彩乃を見て「あの新人は誰?」と、名前と顔を覚えたものです。その翌年には入団3年目にして早くもバウ公演で初ヒロインを演じます。ところが、この初ヒロイン作『ロミオとジュリエット'99』のジュリエット役は、彩乃にとって大きな試練でした。
「あらゆる意味で自分の心の中に残っている作品ではありますね。…舞台に立つこと、人前に出るのが怖くなった時期で、ヒロインをさせていただいているのに、私を見ないで、という状態でした。初日前の舞台稽古の朝、母と一緒にホテルにいたんですね。それであまりにも怖くて、お布団の中から出てこなくて(笑)、行かないって泣いて、母も泣いて(笑)、お願いだから行ってちょうだい、ていう、そんな経験もある作品です。母は今、あの時やめるかと思ってたから、よくこんな学年までいたね、って言うんです(笑)。ただ、不思議なんですけど、恐怖心とかとは別に、舞台に立つ喜びがあるんですね。そこがあるから、どんなに苦しくても離れられなくて、そこが宝塚の魅力だと…。」

 さまざまな試練をくぐり抜け、「舞台って楽しいと再確認できた」という時期に、彩乃は'01年のバウホール公演『マノン』でヒロイン、マノン役を演じます。主演は瀬奈で、主演としては初のコンビでした。その瀬奈と後日、月組で主演コンビになるのですから、思い返せば運命の出会いでした。瀬奈とは「オフでもお話させていただいて、舞台上でも深くコミュニケーションさせていただいて、すごく密度の濃い出会いをしたという感じがあって、私のなかでそこが原点という気がしますね」。そんな「とっても楽しかった」時期に、突然、宙組へ組替え。「ホントに泣きわめく感じでした(笑)」

 しかし「宝塚は一つ」と思い改め、宙組になじんでいった彩乃は「花總(まり)さんというすばらしい娘役さん」に出会い、花總の「舞台に対する緊張感」に感銘を受けます。また、いろんなジャンルの役を演じ、主演男役だった和央ようか、現在主演となっている水夏希、大和悠河、安蘭けいと組むなど、着々と力を蓄えていきます。宙組時代の代表作に、『鳳凰伝』のタマル、『白昼の稲妻』のベラ、『ホテル ステラマリス』のアリスンなどがあり、バウ『THE LAST PARTY』のゼルダ・フィッツジェラルドも印象深く残ります。

 '05年月組に、主演娘役として組替え。瀬奈じゅんの相手役としての活躍はご存じの通りです。『Ernest in Love』『JAZZYな妖精たち』『あかねさす紫の花』『レ・ビジュー・ブリアン』『パリの空よりも高く』『ダル・レークの恋』など、舞台映像がたっぷり流れます。そうそう、『THE LAST PARTY』のゼルダを月組での再演でまた演じるというめったにない経験もしました。
 '07年には『マジシャンの憂鬱』で宝塚の娘役としてはめずらしい「ぶっきらぼう」なヴェロニカを演じ、『MAHOROBA』では日本書紀の神・オトタチバナを、ドラマシティ『A-"R"ex』ではやはり神のニケを熱演。実はこのころから、退団を考えていたようです。舞台での存在感がますます増し、女優ぶりが上がった彩乃を見て、もしかして…と思っていた私。やはり、そうだったんだ…。そして明るく元気で繊細なサリー、ビルをとっても愛してるサリーで、彩乃は宝塚を去って行きます。

 宝塚とはどんなところ?と聞かれた彩乃、「自分自身を奮い立たせてくれる場所であって、甘やかすだけでなく、背中を押しつつ、荒波にも突き落としつつ、成長させてくれる。でもどこか煌めきがあるんですよね。どん底にいるようで、光がある場所というか。一言では語り尽くせません、想いがありすぎて」。

 瀬奈については「一言で言ったら、感謝」と語る彩乃、思いがあふれ、美しい涙を見せます。
「瀬奈さんという方に巡りあえたことが、私自身の中で宝物なんです」。

 番組は、5月5日の宝塚大劇場千秋楽での彩乃の姿、サヨナラショー、退団挨拶などの模様で幕となりました。ピンクのバラを抱えて微笑む彩乃。その微笑みが7月6日、東京宝塚劇場・千秋楽のその日まで輝きますように。

 

 さて次回は何をチェックしましょうか。昨年の星組公演、安蘭けいと遠野あすかの大劇場お披露目作品『さくら』と『シークレット・ハンター』が早くも登場しますし、彩乃のディナーショー「Singin' Lady K!」もオンエアされます。春野寿美礼主演の『源氏物語 あさきゆめみしII』、湖月わたるダンシング・リサイタル「Across」と、2人の退団目前公演も放送されます。ご期待ください。M・Kでした。

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